お知らせ

作品展に寄せて #06

 少し長いブログになりますが、明日の作品展に向けてお付き合いください。

 わたしの小さいころの思い出に「ターザンごっこ」があります。記憶の中では、切り立った崖に垂れ下がっている蔦を頼りに崖を登ったりターザンのように左右に揺れてみたり…。近所のお兄ちゃんの姿に憧れ、「ぼくも、あんなふうにかっこよく登ったり揺らしたりしたいな。」と思いながら、一方では(落ちたらどうしよう…)という恐怖心とも闘いながら興奮して夢中になって遊んだものでした。
 やがて大人になり、再びその崖を見に行ったとき、
「あれっ、こんなに小さかったっけ…。わずか2メートル足らずの緩やかな斜面。なんであの頃はこんなちっぽけな斜面で夢中になって遊んでいたんだろう。」
と不思議な感覚になりました。どうやら、子どもには、子どもにしか見えないもの、子どもにしか感じ取れない感覚があるようです。

 たとえばこの絵。

 これは、年少さんが初めて芋ほりを体験し、その感動を表現したものです。その時に、
「お芋さんって、いろんな形しているね。これは○○に見える…」
と、サツマイモを何かに見立てて想像を膨らませて楽しんでいました。それが、次のような作品になりました。

 サツマイモにビーズやボタンをいっぱい並べてペットボトルの中に千日紅の花。これは何を表現したのでしょうか。みなさんも想像してみてください。
 年少さんは1学期からさまざまな粘土を使った製作遊びをしてきました。もちろん明日の作品展の後も粘土遊びは継続していきます。そんな“粘土遊び”の“今”が次の作品です。

 ケーキをイメージして作りました。いろいろな素材がトッピングされていておいしそうですね。ドングリや貝殻、半透明のガラス…。それぞれにきっと意味があるのでしょう。
 では、チンアナゴのようにケーキからニョキッと出ている赤いモールは何?
 聞いてびっくり!
 でも納得の作品です。(答えは最後に…。いろいろ考えてみてください。)

 次は、年中さんの紹介です。

 年中さんのこの巨大な折り鶴。もちろん共同作品です。折り紙遊びがだんだん巨大化していき、最後には教室いっぱいに紙をつなげ、みんなで『巨大折り鶴』に挑戦しました。それがこの作品。
 でもよく見ると、いたるところにガムテープがペタペタと貼られています。

 大人視点で作品を見ると、
「もったいないな~。せっかくこんなに大きな鶴を折ったのに…。ガムテープをベタベタ貼って…。」
となるのでしょうが、実はこのテープ、子どもたちにとっての“絆創膏”。
 大きな鶴を折って背中を膨らませようとしたり遊戯室に移動しようとしたりすると、どうしても破れてしまいます。
「せっかく折った鶴さん。破れてかわいそう…。」
と手当したときに活躍したのが『ガムテープ』。
 そう思ってみると、このガムテープに子どもたちの優しい愛が見えてきます。

 じゃあ、この鶴の下についている、この新聞紙を丸めたものは何?

 もちろん、吊るしているスズランテープが抜けないように付けたものですが、
「やめて。そんなもの付けるのは…。」
と言いたくなるような、実におちゃめな(?)いたずらっ子の子どもらしい発想です。
 ちなみに、糸のかわりに色とりどりのスズランテープを使ったのは、こカラフルな感じが好きなこのクラスのイメージとぴったりですね。

 次は年長さん。年長さんのこの作品は何を表現したものだと思いますか?

 ドングリを輪にして並べ、外側は大きなドングリ、内側に小さなドングリ。そのなかには赤い実が置かれています。ドングリの輪の外側には、赤のチェック柄や緑色の布を段ボールに貼り付けて立てています。子どもの頭の中をのぞくと「なるほど!」と納得です。
 作品タイトルは『きゃんぷ ふぁいやー』。
 本当はキャンプファイヤーではなくて、11月11日に「森の教室(黒髪山キャンプフィールド)」で行った「焼き芋大会」の思い出を作品にしたものです。

 外側の大きなドングリは「わたしたち(子どもたち)」。中の小さなドングリはキャンプファイヤーの周りの石。その中の赤い実がサツマイモなのでしょう。
 ホカホカしておいしかった思い出と強烈な炎や炭になる前の赤い薪の感動が「赤」になったのかもしれません。周りの赤いチェック柄の布は紅葉をイメージしたのでしょうか。ほんの手のひらサイズの小さな作品ですが、この作品には11月11日の思い出がたくさんたくさん詰まっているのです。
 作品展では、ぜひそうした一人ひとりのお子様が作品に込めた思いやエピソードもいっしょにご鑑賞ください。

~ 子ども時代の体験は大人時代のためにあるんじゃなくて、子ども時代のためにある。子ども時代にしか味わえないことを味わうためにある。子ども時代の5分間の体験は大人時代の1年間の体験に勝る。 ~
 『「もののけ姫」はこうして生まれた。』という対談の中で監督・アニメーターの宮﨑駿さんが語った言葉です。作品展では、ぜひお子様が今、日々全身で味わっている“子ども時代”を親子で一緒に体験してください。
 明日は、よろしくお願いします。

P.S〈クイズの回答〉
 赤いモールは消防自動車の『ホース』。先日の避難訓練で見た消防自動車が頭の中に残っていたのでしょうね。消防自動車の「赤」と「ホース」が重なり合い、どうしてもケーキのなかにもトッピングしたくなったのでしょう。
 子どもたちの発想は大人とは全然違ってすべての経験が一体となっているのですね。そんな想像をしながら子どもたちの一つ一つの作品を見てくれたらうれしいです。