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競争考

園長日記

 運動会の季節になると思い出す話があります。もう10年以上も前のことですが、当時大阪大学の副学長をされていた大竹文雄先生の市民講座を聴講した時にお聞きした「小学校の隠れたカリキュラム」という話です。

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 学校の先生は、子どもたちに競争させる時、つい「勝てなかった子」や「最下位になった子」がかわいそうだと考えてしまいます。そして、「競争させることに教育的意味があるのか」「勝つことが目的ではない」と議論します。そうした中で「競争を嫌い、助け合い精神を涵養しよう」と、競争をさせない教育、例えば、《徒競走をしても順位を付けない》といった取組をしている小学校もありました。
 そこで、インターネットを使って、そうした教育方針のもとで学んできた子どもたちは、将来どのように育つのかを調査してみました。すると、反競争的な教育を受けた地域の人たちは利他性(人のために尽くす)が低く、協力には否定的で助け合わず、より競争が激化したという結果が出ました。
 「人には能力差がなく無限の可能性があり、誰でもやればできるんだ」という考え方が「できないのは、その人が努力しなかったからだ。努力をしない者に手を差し伸べる必要はない」という意識につながったのでしょう。
 競争を否定した教育が、逆に過度な競争を助長している可能性があります。教育は、やり方によっては先生が意図したものとは異なる価値観を子どもたちに与えてしまうこともあります。競争と助け合いの両方が大切だという価値観をうまく伝えていく必要があるのではないでしょうか。

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 おおむね、そんな内容でした。
 子どもたちは「競争」が大好きです。でも、負けるのは大嫌い。大好きな競争を、「負けたけど頑張ったから満足。」「負けても楽しかった。もう一回やりたい!」と終わらせることができたらいいですね。
 オリンピックでは、敗者が勝者を祝福し、勝者が敗者を称えます。本園の運動会もそうなればいいなと思っています。